小林郁美さんから

小林さんは、太田さんの長男、献(ささぐ)くんの学校の先生です。
太田さん著「星の子」を読んでの感想を、送ってきて下さいました。


  太田先生へ

 お世話になっております。いつも温かいお心遣い有難うございます。「星の子」をさっそく読ませて頂きました。採点をせずに積んであるテストと宿題のプリントをそっちのけで、教室の事務机に座って読みふけってしまいました。「郁美先生、打ち合わせをしましょう。」という同僚の先生に声をかけられ、後髪をひかれる思いで職員室に向いました。話し合いが終わって、教室に戻り、ちょっとだけと思って、本を開きました。

 するといつの間にか、外は真っ暗、虫の声も盛り上がっていました。そして、机の上には、山積みのテスト・・・。宿題を後回しにして、遊びに行った子どもたちも、こんな心境かと、宿題を三つ出したことが少々酷かなという気になりました。

 ”星の子”は、にやにや、クスクス、ドキドキしながら読みました。一人で笑っていて、周りの人からは怪しまれるかもしれません。深層心理をついているものや「そうそう。」と共感するもの、そして、子どものつぶやきが新鮮で、ポッと心が温かくなるもの、胸を踊らせて一コマ一コマを見せて頂きました。

 ”星”は、深く問い詰めて考える機会を与えて下さいました。教育のこと、福祉のこと、人生のこと。もっと頭と体を使わなくては・・・と思いました。そして、先生が持っている感性を鋭くキャッチする心を、教師として磨いていきたいと思いました。列を乱さず歩くことと、美しい富士山に会って、つい立ち止まってしまうこと、どちらが大切なのかわかっていながら、運動会の練習でまっすぐ並ばせようと声をあらくして叱ることが多くなってしまう心のゆとりのなさを反省しました。

 先生の絵画教室に通う子どもたちの絵に出会った時のことを書かせて頂きます。四年生の松本怜征くんの家に飾られていた、いのししの絵の美しさは、一年以上たった今でも、一度しか見ていないのにはっきり覚えているくらい印象的でした。家に飾りたいくらい気に入ってしまいました。一年生の中野彰子さんの、りすとコアラの絵を見た時も一目惚れしてしまいました。夏休みに描いたという献くんの二羽の鳥の絵も、このままずっと教室に飾っておきたいと思うくらい魅かれてしまいました。

 どうしたら、こんな風に引き出してあげられるのか、疑問に感じていました。授業で描かせる前に、注文をたくさんしすぎて似たような絵になってしまったり、こじんまりとまとまってしまったりという失敗をしてしまうことがあります。どうしたらよいのだろう・・・。その答えが、「星の子」を読んでいるうちに見つかってきました。与えるのではなく、心の中の一人言を聞いてあげることで、子どもたちが本来持っている素晴らしい感性を引き出して表現につなげられるのではないかと。

 とりとめもなく書いてしまい、すみませんでした。心にたくさん栄養をつけたせいか、筆無精の私らしからず、胸を踊らせながら筆をはしらせてしまいました。有難うございました。

 どうぞ、御健康に注意なさりながら、芸術のために今後一層活躍されるよう祈り上げます。

戻る 花の罫線 ホーム