「テクニックと感性」の章で、技術的にはうまい。しかし・・・。という作家が多いことを指摘させていただきました。今回は、それとまったく逆の話です。
有銘寛秀さん。彼は、障害者アートバンクの380人の登録作家の中でも、特別な存在です。作品を見ていただければ一目瞭然ですが、とにかく目立つ作品。インパクトのある作品。感想をいえといわれれば、それにつきます。赤・青・黄色といった原色のカラフルな色使い。子供じみたキャラクター。そして大胆な構図。少しでも絵について知識のある人なら誰しも、有銘寛秀さんの作品を間違っても「芸術的に素晴らしい」などと賞賛する人はいないでしょう。
はっきりいって有銘寛秀さんの作品は、下手くそです。キャラクターも拙いし、デッサンもなっていないし、色彩感覚に至っては日本人とは思えないものがあります。芸術画ではなく、イラストレーションとして捕らえてみても、彼の才能を評価できる点はあまりありません。
それでも、障害者アートバンクではクライアントに絶大な人気を誇っているのです。それだけではありません。 あの厳しい作品審査委員会のデザイナー方も、有銘寛秀さんの作品には比較的寛大なのです。それは、どうしてでしょうか。
最大の理由は、彼の作品が持つ、特殊なパワーと不思議なオリジナリティでしょう。どの作品にも、笑った顔、大きな顔、いろんな動物や花がところ狭しと並んでいます。それも極端に大きい顔であったり、変な構図であったり、複数の繰り返しであったりする。常識を越えた有銘さんの発想が、デッサンや色使い・キャラクターの下手さと奇妙なミスマッチをおこし、見るものを微笑ませてくれるのです。
イラストレーションの世界でも、一時期「うまへた絵」というのが流行った時期がありました。一流のイラストレーターがあえてタッチを素人っぽくすることで、新鮮さを出そうとした技法でした。しかし、有銘さんがすごいのは本当に下手なのに、発想と彩色のユニークさだけで、どんな一流イラストレーターも出せないような味を表現していることではないでしょうか。
いや、こうして有銘さんの作品についてあれこれ論じること自体が、もはや無意味なのかもしれません。彼の作品には、人を引きつけるパワーがある。これこそが、実は障害者アートバンクが一番求めているものでありますし、実はアートというものの基本ではないでしょうか。有銘寛秀さんの絵を見ていると、「楽しくなければ、絵じゃないよ!!」と語りかけられているような気がします。有銘寛秀は、障害者アートバンクの中で技術的にはもっとも下手ですが、とても貴重な、そして不思議なアーチストなのです。
|