ミスターウラオカのイラスト一言アドバイス

芸術家魂というもの Part.13

今年も障害者アートバンク作家の原画展が、銀座・柴山画廊で開催されました。昨年に引き続き、2回目です。
今年は、第13回障害者アートバンク大賞受賞作家を中心にした原画展ということで、大賞受賞者の太田きよしさん、アサヒビール奨励賞の秦美紀子さん、日立キャピタル特別賞の橋本知佳さんの3人の作品が飾られ、私もさっそく見に行って来ました。

それぞれタイプの違う作家の作品ながら、障害者アートバンクの特徴である暖かみのある作風は
共通していて、来場者の気持をなごませてくれました。

太田さんのテラコッタ作品けれども私がこの原画展の会場で何よりも惹かれたのは、太田きよしさんのテラコッタでした。

太田きよしさんは、ご存知の方もいるかと思いますが、交通事故で障害を負う前は造形作家として抽象画家として、そして高校の美術の先生として、芸術活動に勤しんでいた人です。
得意分野である造形はもとより、抽象画に関しても自分の納得のいく作品ができるまであと一歩と、まさに芸術家として油が乗っていたその時期に太田さんは事故に遭われたのです。
しかも、芸術家にとっては致命的な障害である「右脳損傷」という打撃を受けました。
医者からも「もう、芸術活動は無理でしょう」と、宣告されてしまったそうです。
それなのに、太田きよしさんは諦めなかった。というより、諦めきれなかったのでしょう。
その後の太田さんの、テラコッタを通してのリハビリ、そして芸術活動の開始のエピソードについては作家紹介のページで読んでいただくとして、私は今回、そんな太田さんの心に住む「芸術家魂」というものに注目したいと思います。

太田さんのテラコッタ作品 太田さんのテラコッタ作品 太田さんのテラコッタ作品

人は、これがなければ生きていけない、これがあるから生きていける。誰でもそういう「生きる意味」を持って、人生を生きているのでしょう。意識するか、しないかの違いはあっても。
太田きよしさんの場合は、それが「芸術」でした。
太田さんもまた、「やむにやまれず表現したい」衝動にかられる「表現者」だったのです。

それを強く感じたのが、会場に展示されたテラコッタを見たときです。
見た人を惹きつけずにはいられない、不思議な精霊たち。
誰もが微笑み、愉快になり、そして穏やかな気持になります。

太田さんのテラコッタ作品「この中の幾つかは、ニューヨークのテロ事件があった後に、主人が思うところがあって作ったものです」
奥様の順子さんが、静かに説明してくれました。
「あの悲惨な事件のあと、暗く沈んだ人たちに何とか元気を持ってもらいたい、希望を持ってほしい。そんな主人なりの思いと祈りをこめて、作品を作ったんだと思います」

この暗く閉塞感に満ち満ちた世の中に、アートはいったい何ができるのか。
その答えを、太田きよしさんは与えてくれました。

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