ミスターウラオカのイラスト一言アドバイス

ワクワクとドキドキに満ちた快感パラダイス! Part.14

今回は私たちの知っている、既存のどの美術スタイルにも当てはまらない、おもしろさと衝撃にあふれたアート作品集。「DNAパラダイス(27人のアウトサイダーアーティストたち)」(はた よしこ編著/日本知的障害者福祉協会)より戸原一男氏(元アートビリティ代表)の書評をご紹介します。



アートビリティの審査会において作品の審査をしていて、思うことがある。
「いい絵とは、何だろうか」「そもそも、アートとは何だろうか」と。
というのも、アートビリティの審査会というのは、鑑賞としてのアートの是非を評価するのではなく、メディアに使用可能な(商業利用が可能である)作品のセレクション作業にすぎないからだ。素晴らしいアートがメディアに使えるとは限らないし、アートとしての価値は低くてもユーザーから人気を呼びそうな作風の作品はたくさんある。
アートビリティの事業理念が障害者アーチストへの所得支援を第一としている以上、審査会の選考基準はあくまで市場理論に乗っ取った形で進行せざるを得ないのである。

本書「DNAパラダイス」には、27人の障害者アーチストの作品が掲載されているが、アートビリティの作品選考会においては、おそらくどれも合格とはならない作品に違いない。どの作品もイラストレーションというより明らかに「アート」であり、商業的に使用するにはあまりに作家の個性が勝ちすぎている作品ばかりだからだ。しかし、そのことは逆に、本書のアート的価値を高めることでもあり、話はややこしい。単純にいえば、アートビリティがいかにこうした純粋アートの作品群を排斥しているかという反省になるのかもしれない。
書籍:DNAパラダイス



作品:ひこうき 難しい理屈は抜きにして、本書の感想を一言で記すならば、とにかく楽しい。ワクワクしてくる。これは、普段のアートビリティの審査会では感じることがない快感である。
 たとえば、コピー用紙とセロハンテープだけを使って組み立てられた精密な飛行機の模型を作り続ける上里浩也さん。うすっぺらの紙を使って、よくぞここまで飛行機のデフォルメを表現できたものだと感心するが、その模型(?)の数がまたすごいらしい。これらをアートビリティの審査会に送られても、残念ながらその対応に困ってしまうのではないか。 



作品:映画ポスター あるいは、日本映画のポスターの模写ばかりを、何百枚という単位で描き続ける木伏大助さん。記憶にインプットしたものを詳細にわたって描くことができるという自閉症特有の能力といってしまえばそれまでだが、映画年鑑に載っていない端役や映倫番号に至るまできっちり書き込んでいる様は、とても人間技とは思えない。一枚だけを見てしまえば単なるポスターの模写にすぎないわけだが、これらがまとまることによって作家のポスター模写への尋常でない表現への意欲が伝わってくる。(正確に言うと、模写ではなく記憶の再現という点がすごいところなのだが)


 
作品:映画ポスター
作品:パジャマのコラージュ

作品:イクラのパジャマ
もうひとつ、下田賢宗さんの「イクラのパジャマ」は、どうだ。全身がイクラの赤い丸で覆われたこの現代アートは、見た瞬間に笑うしかないほどの楽しさにあふれているではないか。彼にとって作品は、鑑賞するだけでは満足できず、肌に身につけるという身体的一体感を持って初めて完成するものらしい。

「アートとは何か?」この問いに対する答えは、難しい。強いていうならば、純粋なアートとはろくでもないものであり、社会に何の役に立たないものといえるかもしれない。しかしそれでも、アート作品を鑑賞するのは面白いし、作品を楽しめる豊かな心を持ち続けたいものだと思う。商業利用目的で作品をセレクションしているアートビリティでも、常にこうした「ろくでもない作品」「とんでもない作品」への畏敬の念を忘れず、アーチストの発掘を続けていくべきではないか。それがすなわちアートビリティの活動の発展に必ずつながるはずだからである。本書を読んで、そんなことを改めて考えさせられた。  障害者アートの奥深さに感動すること請け合いの一冊である。
<< Part.13

Back