題字「星」255

「一郎さま あなたはごきげんよろしほで、けっこうです。あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。とびどぐもたないでくなさい。」
幼い頃、テレビコマーシャルソングのように印象深く いく度となく心の中で反復されていた言葉です。 私はブームに関係なく昔から優れた画家の手がけた賢治の絵本を集め続けてきました。採集箱に宝石とみまちがう、蝶、貝、石を並べる心理とよく似ています。
今年は生誕百年とのことで打ち上げ花火のごとく賢治の評論、絵本、CDが発売され続けています。
豪華なもの、遠い花火のようなものと、音だけのもの、と種々多様。モーツアルトの時と同じで今年は祭りで賢治のお店が沢山、華やかに並ぶのでしょう。
感情の機微をつくし、繊細で精緻な小宇宙に、カーバイトの香りが懐かしくあって、ホタルが乱舞、そんなお店を私は物色します。
「ああつらい僕はもう虫をたべないで餓えて死なう・・」
「杉のこっちにかくれ口をあいてはぁはぁ笑いました・・」
「気にもされず苦にもされず、でくの坊とよばれ・・」
よだかや虔十の中に賢治自身を見ている私は、人々から「気にされないこと」を望んでいただけに天上でどんなにか弱っている賢治を想いフト、おかしくなります。

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