題字「星」283

膝の上に蜜柑を二つ乗せ今日も私は休息の場所にでかけます。そこは四角い畑の周辺の南側の中央です。 秋晴れの中、目的地にかろやかに到着すると、まず、眼鏡をふき、埃を払い身づくろいなどはじめます。
「ネー僕の家まで行こうよ」 ふりむけば2年生の男の子で、一年生の女の子数人もおともでした。「ネー行こうよ」食べ終わった蜜柑の皮を膝の上にのせ私は子供と一緒に旅立つことにしました。
子供達が私の周囲でたわむれます。すると挨拶する人がぐっとふえます。人気者だネーと子供は満足気です。電動車椅子はこの点良いものです。子供が喜びますから・・。子供の顔は私を写した鏡です。お互いの笑顔に感動しあって車椅子は進むのです。
やがて道の左側は 草木の茂った藪に出ました。
「蜜柑の皮は腐るゴミだからここにすててもいいだろうか」と私は子供に聞きました。 「どんな物もすててはいけないよ」子供が言いました。私の胸を感動が走りました。 「ウン、そうだね、そうだね」
長い時間がたちました。 ゲームをくり返し くり返し やっと子供の家に着きました。
「ボクの家、外はサビてるけど中はピカピカさ」この言葉に又、うたれて蜜柑の皮をすててもらうことを忘れ、そのまま家に帰った私の膝に黄色が美しく残ったのでした。

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