題字「星」285

砂をかけられたり、小石をなげられたり、行く手をはばまれたり、子供と同じ高さの眼線を持つ私でも時に子供の冷酷ないじめにであいます。
車椅子はこの場合、弱者の見本で子供のなすがまま、無抵抗主義の見本でもあります。
威嚇はききめなし、追いかけること不可、こんな場合も私にできることといえば、にこやかな対応しかありません。 いじめの主はいつもきまって誠君でした。
さて、運よく誠君に出合わず半年すぎたある日、長い急坂の下で、私は溜息をついていました。
急坂の上には部落があり広々と眺望がひらけて輝いた風景と、珍しい家並みを見ることができるのです。
その時です、車椅子が上に向かい動き出したのは・・・
ハハーと荒い息も聞こえます。満身の力をこめて、汗をかきながら椅子をおしているのは驚きました、成長した誠君だったのです。「困ったことがあったらいつでも電話してョ、とんでくるから」 子供って変わるものです。誠君は私をいじめて、私を知ってくれました。
「お父さんがなまけ物だったのでお母さんは離婚したんだョ、僕にもなまけの悪い遺伝子が半分はいっていて朝起きれなくて困るよ」 誠君の身の上話です。
家に帰っても誰もいないからと、今では私の後をついて歩く誠君です。

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