題字「星」299

私が数え年7、8歳の頃、東京の親戚から贈られた小さなラジオは、切っても切れない愛情深い伴侶でした。 その頃、スイッチを入れると、必ず聞こえてきた曲は美空ひばりの「私は街の子」でした。私は好きで曲に合わせ口笛を吹きました。
そんなある日これも好きだった東海林太郎の歌が終わった直後、今までに聞いたこともないピアノ曲が流れてきたのです。 心が100%の「やさしさと愛情がほしいのよ」の私の心情と環境がそうさせたといわざるをえないのですが、今まで長い間、聞いてきた歌謡とちがいこの曲は私の感情と見事に一致し、幼い私を恍惚?とうっとりと、やさしさで包みこんでくれたのです。
豊かな心がはちきれんばかり。天国のような美しさ。それは生れて初めて味わった感動だったかもしれません。 トロイメライ、トロイメライ。
私は今聞いた曲名を心の中でくりかえしました。感動。感じて動いたのは心だけではありません。ハートも血も、私の動かぬ足に向かいトコトコ流れていきました。 あの感動を今一度。 この日から、ラジオ番組と首ったけで私の名曲へのおっかけが始まりました。 それは今日も続いています。

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