題字「星」300

ある日、ラジオからふと流れてきた一曲に感動体験した幼い私は新聞を広げて、ラジオ番組と首ったけで名曲への追っかけを始めたのです。NHKのFM放送の開局は後年のできごとですが、私にとっては、革命的大事件でした。
やっと手に入れたFMの受信機は小さなトランジスタラジオでした。私はふるえる手で、FMのダイアルを合わせようと必死になったものです。 ところが地方に中継局がない為に電波は弱く、1ミリの半分程度の指針で受信の可否が決まるという有様で、たとえ受信できたところで気まぐれな電波はやがて音をもちさるのでした。 音が良いとはいえ小形のラジオですから、高音で、ブラームスの交響曲など鉄の塊を引き引き走るような音でした。その後、小遣いをためてはラジオを買い替え、買いかえ、今では有名アンプにかこまれたオーディオマニアですが、少年時代、富士川堤防に座り続けた私のそばにいつもラジオがあり、流れる名曲は悠久の時間を与えてくれて、カーネギーホールの音楽堂よりもはるかに立派な音響空間だったと思います。
お疲れの皆さん野辺の一輪の花に飾られた音楽会を是非おためし下さい。感動は、高価で買うものでなく、草いきれの中の音楽でした。

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