題字「星」353

中三の息子が郡の英語スピーチコンテストで一位をとり、
西部コンテストでも選ばれ、県大会出場を決めた。
スピーチの内容は幼い頃の私のことでした。

「未就学の父は戸の隙間からじっと外を見続けて暮らし、飽きると絵日記などつけ、寂しさをこらえた毎日でした。
ある日、兄弟の担任の先生が家庭訪問に来て、この日記を見つけ、親切に赤インクで感想を書いてくれたのです。
その折の天をも突き破る喜び、父は長い人生の中でこれ以上の嬉しさを経験していないと語りました。
兄弟のノートにあって父のノートにない赤インクは想像を絶した深い深い憧れだったようです。50年も前のことなのに父は今でもその先生の名前を覚えており、たった一人の私の先生と決めている。
子どもゆえの邪念のない無欲の果てしない喜び……
この経験が子ども指導の道を歩ませ、現在があります。」


 スピーチの内容は以上ですが、目の上のタンコブでありたいと願った私の希望は“父を尊敬します”の息子の言葉で、はかなく消えるのでした。

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