題字「星」355

待合室で目にした光景ですが、明るい窓ガラスとブラインドの隙間に小さな蝶がまぎれこみ、しきりにもがき苦しんでいたのです。

もがけば、もがくほど、銀粉も飛び散り、羽はちぎれ、蝶は弱るばかりでした。

あせりにあせり、憔悴しきっている私に似ているのでは……

時がくるまで静かに待った方が良いと、教えられました。あることで挫折を味わったナイーブな青年が私に話しかけてくれた、意義ある話の内容です。この話から私は4コマの漫画を創作しました。

灯りに引き寄せられた蝶が必死になって暴れますが、月に似た丸い灯りから逃れることができません。しかしやがて朝が訪れ、周囲も明るくなり、蝶は灯りから難なく逃れ、朝日に向って飛び立つのです。

この青年の悩みからうまれるこまやかで潔い話は、いつも、私の心をゆすってくれます。

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