アートビリティの理念

アートビリティについて

概要

 印刷事業を中心に、障害者の職域開拓を行ってきた社会福祉法人東京コロニーによって、障害者アーティストの才能を活かすために、1986年『障害者アートバンク』として設立されました。それまでの障害者芸術運動とは異なり、障害者アーティストの持つ才能を活用することで、所得面を中心に社会参加を促そうとした事業です。約200名の作家による約4,500点の作品がストックされた堂々たる芸術ライブラリーに成長しました。

 設立当時から「才能に障害はない」を合言葉に、作品そのものを評価することを心がけてきました。その理念をより明確に打ち出すために『障害者』という冠をはずし、2001年に『アートビリティ』と名称変更を行い、現在に至っています。

システム

 アートビリティは、全国から応募された作品を「審査→合格した作品のみをデータの形で保存→企業や団体などに有料で貸出→使用料の一部を作家へ還元」するというシステムです。(60%が作家へ支払われ、40%がアートビリティの運営費に充てられています。)

 審査会は2ヶ月に1度、奇数月に開催されています。審査員はアートディレクター・グラフィックデザイナー・大学の教授などで構成され、事務局の立会いのもとに厳正な審査が行われています。
 応募作品は、毎回200点前後あります。そのうち合格するのは約15%〜25%になっています。 すでに登録されている人気作家でも、毎回、審査会を経て作品が登録されるため、ときにはアートビリティ大賞受賞作家でさえ審査に落ちてしまうこともあります。
 この厳しさが作品の質の高さを生み、今ではクオリティの高さにおいてクライアントから信頼を得るまでになっています。年間約300点以上の作品が、冊子の表紙・リーフレット・ポスター・カレンダー等、さまざまなメディアを通じて世の中にデビューしています。

 登録作品はホームページで公開され、審査会で合格した作品は、審査会の翌日には定例審査会ページでご覧いただくことができます。

アートビリティの考え方

運動ではなく、所得支援を目的とした事業

 障害者の芸術活動を支援する団体は、世の中にたくさんあります。その中で、アートビリティの活動が他と一線を画しているのは、メディアで使用されることを前提として作品をセレクトしている点にあります。アートビリティの審査員が、従来の障害者芸術展で作品の審査に関わってきたような美術関係者ではなく、広告代理店などで活躍しているグラフィクデザイナーであるということもその特徴をよく表しています。
 アートビリティの作品審査基準は、クライアントの希望にマッチするかどうか、そしてデザイナーの感性を刺激することができるかどうか、という点です。
 障害の種類や重さを問うことはありません。イメージや想像力を膨らませる作品であれば、たとえ子どもの描いた作品であろうともアートビリティでは必要とされます。逆に、いくらテクニックに優れていようとも、デザイナーやクライアントの感性を刺激しない作品は登録されません。
 審査会には、ときどき外部のお客様が見学にみえることがありますが、 「こんなにうまい作品でも落とされるのか・・・」といった、驚きの声が聞かれるのもよくあることです。
 アートビリティの審査会は、作品の良し悪しを評価するのではなく、あくまでアートビリティにマッチする作品をセレクトする場です。
 そしてこのことは、アートビリティが障害者の芸術活動を支援するための「運動」ではなく、所得支援を目的とした「事業」だということの証でもあります。

作家活動の支援〜作家は、アートビリティ事業のパートナーに〜

 一方で、障害のある作家たちの芸術活動を支援することも、事務局には求められています。というのは、アートビリティが事業として成り立っていくためには、クオリティの高い作品がより多く集まっていくことが必要だからです。アートビリティにとっては、作家一人一人が事業の大切なパートナーと考えています。
 才能があっても障害があるが故に、納期やクライアントの要望に応えるといった社会システムの中では、その力が発揮できない場合もあります。作家が自分のペースで自分の描きたいものを描き、作品をアートビリティに登録することで使用され、使用料として入ってくるといったアートビリティのシステムは、作家にとっては大変便利です。
 作家がそのシステムを最大限に有効活用できるように、また作家が気持ちよく創作に打ち込めるよう、精神的なサポートをすることも事務局の大切な仕事の一つと考えています。
 アートビリティの活動は、あくまで自分たちの範疇にマッチした作家を応援することであり、ささやかな支援にすぎません。ですが、自分たちの選んだ作家や作品には、責任を持って正当な報酬を与えていきたいと思っています。アートビリティは、そんな考え方から生まれた、小さくても大きな可能性を秘めた事業なのです。